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横浜地方裁判所 平成8年(む)266号 決定

主文

本件請求を却下する。

理由

被告人から平成八年七月二三日本件勾留理由開示の請求があったが、関係記録によると、次のような事実経過が認められる。

すなわち、被告人は平成四年一一月二四日覚せい剤取締法違反(覚せい剤の営利目的所持)の被疑事実で勾留され、同事実について同年一二月一一日横浜地方裁判所に勾留中起訴され(その後追起訴もなされる。)、平成六年三月三日同裁判所において懲役三年及び罰金三〇万円の実刑判決を受け、控訴したが、平成七年四月二六日東京高等裁判所で控訴棄却の判決を受け、その後上告して現在上告審に係属中のものであり、その身柄については、第一審以来同一の勾留が継続しているものである。

ところで、勾留理由開示の請求は、勾留の開始された当該裁判所においてのみ許されると解されるのであるから(最高裁昭和二九年(す)第三〇三号同年八月五日第一小法廷決定・刑集八巻八号一二三七頁、最高裁昭和二九年(す)第三一六号同年九月七日第三小法廷決定・刑集八巻九号一四五九頁参照)、勾留理由開示の請求は、勾留の開始された当該審級においてなされなければならないというべきである。

そうすると、被告人に対する勾留は第一審で開始されたものであり、上告審に係属している現段階では、勾留理由開示の請求は許されないといえる。

したがって、本件請求は不適法であるので、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松浦繁 裁判官 長谷川誠 裁判官 中尾佳久)

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